高級評茶員への道・第九回

今日は烏龍茶について。
鉄観音や岩茶、広東烏龍…どれもこれも美味しくって香りが良くって。鉄観音の美味しさに中国茶に目覚め、広東烏龍の香りにうっとりして岩茶でどっぷりはまった私です。台湾烏龍茶は、大陸だと良いものが手に入りにくいと聞いていたのですが、興味はモチロンあります。
今日はとても興味深いお話が聞けそうだし、珍しいお茶が飲めそうで嬉しい、と思ったのですが、そのカンは当たっていました。
本山というお茶は生産性が高いので安価なのだけれど、上手に作れば鉄観音に負けない、むしろ鉄観音よりも良いものが出来るのだけれど、安いので作り手があまり良いものを作らないというお話や、福建省の農業科学院茶葉研究所が1978年から20年以上かけて有性栽培して作った金観音や黄観音のお話や、紫薔薇(※3つとも鉄観音と黄金桂の掛け合わせ)や黄薔薇(黄観音と黄金桂の掛け合わせ)、丹桂(大紅袍と黄金桂の掛け合わせ)といった新品種についてお話をしてくださいました。また、紫牡丹という鉄観音が自然交配したお茶についても話してくださいました。
雑交して作った新品種の様々なタイプの香りと味はブレンドをするのに使うのに便利だそうです。
岩茶で伝統的なものは晩生型のものらしいのですが、全て晩生型だと生産ラッシュになってしまい、良いものが作れないので、早生型の品種の栽培もするのだそうですが、早生型のお茶は強い焙煎に耐えられないのだそうです。毛蟹や梅占といった閩南が原産地のお茶が閩北にある武夷山で岩茶の製法で作られている理由がちょっとわかったような気がしました。
他にも「鳳凰水仙」のストーリーを聞いたり(※宋の時代の皇帝が喉の乾きに苦しみながら歩いていたときに鳥がお茶の種を落としても、生えてくるまで時間がかかっちゃうじゃないの、という無粋なツッコミはしちゃダメです。大紅袍に赤いマントかけた状元って誰?状元になった人の記録って残ってるよね、皇帝の娘婿ならかなり限定されるからわかるよね、ねねねと言っちゃいけないのと同じ理由で)、台湾烏龍茶の金萱や翠玉というお茶は「台湾茶の父」と呼ばれている呉さんの祖母と母の名前なのだというお話を伺ったり(※メキシコのマルガリータというカクテルはバーテンダーの死んだ恋人の名前らしいです。ラテンな男は恋人の名前を、儒教の国の男は祖母と母の名前をつける…と。メモメモ)、今日も中国茶についての見識が深まり、とても楽しく嬉しい授業でした。
午後の試飲では、岩茶が愛する王さん(※心也清いでは劉さん派が主流ですが、私は王さんも好きです)の今年のお茶で嬉しかったです。あっ!広東烏龍は私が好きな烏〔山東〕山のお茶じゃないの。烏〔山東〕黄枝香単叢、コレきっと絶対美味しいよー、うわーやっぱり美味しいなあ!サイコー!!…ハッ!!「飲む機械になれ」と福井先生にいつも言われているのに!ウッカリ楽しく美味しくいただいてしまいました。間違い間違い。チェックすべきは品種の特徴です。
先入観や無駄知識、雑念が入ると美味しく感じちゃったり不味く思ったりしがちになるから無心無心!私は飲む機械…好き嫌いではなく、その良し悪しだけを識別するプロフェッショナルな女…くんくん。ずぞぞーっ。さわさわ。
そういえば、中級茶芸師の講義の時に講師の先生が「好きなお茶があるとつい評茶の時にえこひいきしてしまうから色々なお茶を万遍なく飲むようにしている」とおっしゃっていました。
きっとこういうことだったのかもしれない、とちょっと反省しました。

寄稿byとおこ

高級評茶員への道・第八回

今日の授業は「カテキン先生」と異名を取る王先生です。
茶カテキンの研究をして、あまりにも人体への良い影響に思わず会社を作ってサプリメントを作り、浙江大学の中だけでも年に1万本~2万本も売れまくるヒット商品を作り出した方らしいです。いつも午後はお茶のテイスティングなのですが、今日は一日中王先生の授業でした。

茶葉の化学成分についてのお話をされたのですが、ティーポリフェノールは18%~36%、アミノ酸は1%~4%、と中級で習ったことの復習をしつつ、「ところでカフェインは高濃度になると依存性が出てくるから許可なく作るの、法律違反なんだよ」「でも簡単に作れるんだー」と作り方を紹介してくださいました(どうやって作るかは受けた人だけのヒミツです)。先生…ひょっとして、お茶目さん?
茶葉の中には700種類以上の成分があって、うち300種類くらいが健康に関係があるとか、ティーポリフェノールは成熟度が高めの茶葉に多く含まれているとか、そういった真面目な話の中にラットやショウジョウバエを使った実験の話を織り込み「体重50kgの人間に500mgのティーポリフェノール(以下TP)を与えたら半数が死にます☆という実験は出来ないので、ネズミを使ったんだけど、その100分の1、つまり50kgの体重の人が毎日5g摂取するのであれば、まず間違いなく安全です。まー、TPを500g以上摂取するには、2.5kg~3kgの茶葉を食べないとダメだから難しいよね、ハハハー」ととても楽しくお話ししてくださったので、難しい内容の授業だったのですが、とても身近に感じることが出来ました。「本草拾遺という漢方薬の本に『お茶は万物の薬だ』と書いてあるんだけれど、僕、最近お茶好きが高じて漢方にも興味が出てきてね」とか「茶という字の草冠 を十十(で20)、下を八十八と読んで、20+88=108歳で茶寿☆だって米を88と読んで88は米寿でしょ?」と、本当に楽しかったです。
今日の授業を受け、TPには老化防止のほかにもシミを薄くしたり様々な美容効果があると知り、王先生が開発したサプリを思わず一瓶買ってしまいました。オマケにその瓶に先生のサインをいただきました(※ミーハーです)。

先生は話題も豊富で飽きさせず、「望むだけいくらでも講義してあげるよ」と本当に楽しそうに授業をしてくださいました。
ああ、中国語が堪能だったら頑張って勉強して浙江大学の茶学系に入りたい、王先生のゼミに入りたいと心から思いました。「十年早い」、じゃなくて「十年遅い」かもしれませんが(アラウンドサーティーな私です)。
茶葉について勉強するとき「粗老ではなく成熟した」「若い葉は内容が薄い」という言葉を聞くとほくそ笑…じゃなかった微笑んでしまうお年頃です(笑)。

寄稿byとおこ

高級評茶員への道・第七回

今日は茉莉花茶の加工工芸の勉強でした。
ワタクシ、中級茶芸師の実技テストが茉莉花茶だったので、以来思い入れは人一倍☆だから結構詳しいのよねー、今日は楽勝♪と思っていました。


講義中に使われた「龍珠」というジャスミン茶。

でも「貧乏な人たちは、白蘭花で着香したお茶を飲んでいます。ジャスミンの花ばかりでなく、香りの上げ底をするために白蘭花を使っても、白蘭花の香りがするものは『透蘭』といって評茶では否定的な意味で使われていますが、最近はわざと白蘭花の香りが残ったものを作ることもあります。今はお金持ちになった人でも、昔から馴染み深い味が好きだから、ホンモノの茉莉花茶よりもそういった味の方が好きだからとよく売れています」という話は初耳でした。昨今の清香ブームで昔ながらの焙煎の鉄観音が少なくなっているということはよく聞いていましたが、茉莉花茶もそうなのか…でも私も有名なラーメン店のこだわりの味よりもサッ○ロ一番の塩味のラーメンが一番好きだしなー…。
あと、高級な花茶を作るときは花の香りをつけるのは時間が少なめで温度も短めだという話は知っていましたが、低級なお茶を作るときにその花を再利用しているという話は知りませんでした。
結構詳しいつもりでいても、やっぱりまだまだです、本当に中国茶は奥が深く、学んでいて楽しいです。


講義中に使われた「女児環(茶)」というジャスミン茶。

午後は、形が違う花茶の味比べをしたり、同じ会社の違う等級の茶葉の味比べと「見た目は悪いけれど味は美味しい謎の花茶…あなたならいくらの値段をつける?」というクイズのような試飲をしました。


講義中に使われた「蝦針」というジャスミン茶。

また、工芸茶というお湯の中で美しく花開く花茶をいくつか見せていただき、見た目で「どれが好きか」のアンケートを取られました。


「どれが好きか」–八種類の工芸茶。

どうも私の趣味はオーソドックスらしく、3、4人の同学と全く同じ3つを選んだので、同じのを選んだ方々に「うわー。夫を取らないでくださいねー(笑)」「うわー。旦那様を紹介してくださいよぅ(笑)」「うわー。一緒に合コンは行けませんねー(笑)」と軽口を叩いていたのですが、『生きた日本語を学びたい』と研究熱心な大江先生に「ゴウコ?ナニソレ?」と聞かれました。「えー。ゴウコではなく、ゴウコンです。合同コンパという言葉の略です(中略)」と、全く役に立たない日本語をお教えしておきました。
普段、奥深い中国茶の世界をご紹介いただき、尊敬してやまない大江先生に教えられることはあっても、私が教えることなんてないだろうと思っていたのですが…まさかそんな言葉を教えるとは…申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ちなみに寒かったので帽子を被っていたら同じ班のAさんが「あっ!!その帽子で思い出したけれど、武夷山で転んでいたよね?」とほぼ一年前の、出来れば思い出していただきたくなかった記憶を蘇らせていました。えー。出来れば忘れてください、そして二度と思い出さないでいただければ幸いです、大江先生&Aさん。

寄稿byとおこ

高級評茶員への道・第六回

今日はプーアル茶及び白茶の加工工芸と品質の特性について習いました。
プーアル茶、昔は散茶だとちょっとしか運べないので湿らせてしんなりさせたものを竹の皮に包んでえっちらおっちら半年~1年くらいかけて寒暖の激しい山岳地帯を、風雨に晒されながら運んでいたので作った直後のものと風味が異なるようになり、作った直後よりも味がまろやかで美味しくなったのだけれど、交通が便利になると味の熟成が足りないので創意工夫を重ねて1973年に熟茶の製法があみだされた(※大量生産は1974年にスタート)とか、ホンモノのプーアル茶は醤油のような色ではなく、褐色がかった紅い湯色であるとか、老樹のお茶の葉は条のしまりがゆるいけれど味がまろやかで厚みがあるとか、作り方だけではなくいろいろと興味深いお話を沢山伺いました。
白茶については2大産地があること、炒めたり揉んだりせず、萎凋後に乾燥させるという手法(焙煎もしくは陰干)で作られること、六大茶類の中でも産量が少なく珍しいものであることなどを習いました。また、古い白茶は漢方として使われているとか、解毒効果や美容作用があることも習いました。


顧先生が私達に白、黒茶の加工と審評について指導中。

解毒効果はあまり興味がないのですが…美容効果ですかー。興味アリアリです。えー…確か心也清の白牡丹、結構古いと聞いた記憶が。
あっ。でも、確か以前心也清の上級コースを受けたときに「お茶にはダイエット効果があるけれど、中でも熟茶はTP(※ティーポリフェノール)以外にも微生物の善玉菌パワーでダイエットに最適と言われている」とか習った記憶が蘇ってきました。
んもー、午後のプーアル茶と白茶の試飲は、ぐびぐび飲んじゃうよー、と胸をときめかせつつ、ランチタイムに突入。

個人であれば手に入れることが難しいホンモノの美味しいお茶のサンプルを試飲できるというのは、本当に得がたい機会です。
しかも、実技テストに出ることがナイ茶葉なので、ゆったり味わうことが出来ます。
まず、プーアル茶…ぐおーっと力強い味が…コレが本当に美味しいプーアル茶の力強さってヤツかしら、強烈だなー…はっ!!私達、洗茶、し忘れてない??
他のお茶は洗わないのですが、黒茶のみ、評茶形式でも一煎目は素早く捨てないとダメだって習ったのに!!
しまった…に、2煎目の味の方が重要だって、せ、先生言っていたよね?と1煎目はちょっとだけ飲んで、湯色を見てから2煎目にGOです。
美味しいなー。酸っぱいかなぁ。書いてあるからわかるけれど、、、自分ではそこまでわからないかしら。難しいなー。


講義中に使われたプーアル茶サンプル。


プーアル茶の茶湯。

白茶はどうも味が好きになれない…うー。青っぽい味、苦手です。
同じ班の人は「こんなに甘くて爽やかで美味しいのにー」とぐびぐび飲んでいました。私の分まで美しくなってください…。


講義中に使われた白茶サンプル。


白茶の茶湯。

福井先生が、心也清で売っているプーアル茶のどれが一番高いか当てクイズに誘ってくださいました。うちの班のKさんが、授業中に台湾茶で同じことをしたののリベンジかもしれません。
こ、これかなぁ…と指差したのがビンゴでひと安心。
班章という地域で取れたものらしいです。
私は自分の舌をあまり信用しておらず、最近は安心のブランド(※プーアル茶で言えば大益)で、しかも絶対に美味しいだろうというものしか買わないのですが、最近、「少しはわかるようになってきたかもしれない」という手応えを感じはじめました。福井先生のように岩茶を飲んで「このお茶は山の標高が低いね」と言えちゃうようなレベルには程遠いのですが、この講座に参加する前の自分と比べて、随分と進歩できているように思います。

寄稿byとおこ