武夷山茶工場見学ツアー・レポート(その二)

(その一に続く)

正山茶業有限公司の見学が終了した後、夜は幔亭岩茶研究所を訪ねました。
この研究所の創設者は劉宝順という方で、大紅袍製作工芸伝承人と認定されている12人うちの一人です。
ちなみに武夷山の大紅袍岩茶製作工芸は、すでに中国政府に「国家非物質文化遺産」として認定され、しかも唯一茶の名目でリスト入りを果たした申請項目です。さらに中国政府は大紅袍岩茶製作工芸を国連のユネスコに「人類の口承及び非物質遺産」として認定申請を実施しているそうです。

幔亭岩茶研究所について
んゴ――――ジャスッッッ!!と叫びだしたくなるような大豪邸でした。
ちょっとヨーロピアンな門構え&御車寄せを通り抜けたらシノワズリな素敵な空間が広がっていました。


ゴージャスな豪邸の一角。


劉さん自らお茶を淹れてくださり、超感動。

さらに別館に行き、ラボという言葉が良く似合うお部屋で試飲タイム。
とびっきり美味しいお茶を目の玉が飛び出るような値段で売っていましたが「スタバのラテと同じくらいだっ」「美味しい日本料理屋さんでディナーする半分以下の値段だっ」とか、あの瞬間の私は言い訳と自己弁護の天才だったような気がします。同じ天才なら、茶芸とか評茶の天才になりたい(遠い目)。
劉さんはちょっとシャイな感じの上品な方でした。
試飲の前に「この蓋碗は売っていただけますか」と質問したら、「あまり数がないのですが、プレゼントしますよ」と気前の良いことをおっしゃり、実際参加者全員に蓋碗を下さいました…イ、イケメンでもあったかな、とか言ってみる。いや、冗談抜きにホントに素敵な方でした。

風景区散策と大紅袍の原木について
朝から3時間の山登り!と聞いてどきどきしていたのですが、道は舗装されていて、歩きやすかったです...観光ルートは。
道すがら、ガイド役のお茶工場の方(公務員…寝癖バッチリ)が武夷山の山々を「あれはタイタニック峰」「あれは竹の子」「あれは鷹の嘴…昔はあそこに良い茶木があったんだけど水不足で枯れちゃったんだよ」などと教えてくださったり、生えている茶木を見て「これは肉桂」「これは水仙」「北斗」「大紅袍」と説明してくださったのが嬉しかったです。


「タイタニック峰」


「鷹嘴峰」

普通の観光ガイドさんではなく、武夷山のエキスパートだからこそ出来る説明だなぁ、と感動しつつ、1時間も歩いた頃でしょうか。天心永楽禅寺に着きました。


天心永楽禅寺

大紅袍伝説で、病に倒れた科挙の受験生がここのお寺の和尚さんに大紅袍のお茶を飲ませてもらったら病が治り、無事状元(中国古代科挙制度で最終試験で第1位の成績を修めた者に与えられる称号)で試験に受かったお礼に大臣しか纏うことの出来ない赤いマントを茶木にかけた、というものがあります。ここがウワサのお寺か三教一体…三教って?儒教・仏教・道教か…ふむふむ…ん?
ここから大紅袍の原木まであと1230mという看板がある、よーしラストスパート、と思ったらガイドさんが「ちょっと観光ルートを外れます」とずんずん舗装されていない道を歩き始めます。え?何があるの?と追いかけてどんどん山道を登っていったら広大な茶畑が広がっていました。


茶畑の風景1


茶畑の風景2

これを見せたかったのかなーと思ったら、更に上に。「体力に自信がない人はここで待っていてもいいですよ」と言われても、その先に何があるのか知りたいのがオトメゴコロ。


山道を登る参加者の行列。


このような山道も!

一人の脱落者もなく、更に進むと農家のような家が。軒先で休ませてください…え?まだ進むの?も、もう限界です…よぼよぼ…私はそこで脱落したのですが、その先には樹齢100年を超える水仙の老木があったそうです(この茶葉から百歳香というお茶が出来る)。


樹齢100年を超える水仙の老木1


樹齢100年を超える水仙の老木2

同室のSさんが、水仙の花をお土産、と言って下さいました。ううぅ。人の優しさが沁みて来る…とじーんとしていたらガイドさんが「あ、それ中を食べると甘くて美味しいよ(蜜があるらしい)」と教えてくださる。どうして食いしん坊だとばれたんだろう。だけどもったいないから食べず、つぶれないように大切に持って道なき道を進む…こけっ。転びました。近くにいたTさんが荷物を持ってくださったり絆創膏を張ってくださったり。旅は道連れ世は情けってこういうことかなぁ。小周も優しく手を引いてくれたし。あ、ちなみに転んでも水仙の花は死守しました。


水仙茶樹の花

舗装された道に戻ってしばらく進み、最後の難関217段の階段を昇りきったらとうとう大紅袍の原木です。


最後の難関の217段の階段はこの先。

感動…。皆で集合写真を撮り、小周にナイスなポージングを教わりながら写真を撮ったりしてからバスに戻りました。大紅袍の木から10分くらいで出口についたので、ここから入ればこんなに膝が笑うこともなかったのかな、と一瞬思いましたが、すぐに普通の観光ではまず見ることが出来ないだろう景色はプライスレスだったなぁ、あと、原木に対する感動もあのルートであればこそだったのかもしれないと思い直しました。


大紅袍の原木

どうでもいいことですが、ガイドさんの足元が革靴だったのにはびっくりしました。私、運動靴でもこけたのに。

続く
寄稿by東塚洋子
編集・写真by心也清茶社

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