径山寺を訪ねるお茶の旅(その一)

 中国春節の休みを利用して、「日中にまたがってお茶関係の仕事をしている以上一度に見学をしなければならない」と日ごろに考えていた杭州徑山寺を訪ねました。
 径山寺は、唐の時代に初めて建立され、南宋時代に「五山十刹」のトップとなった古い名刹で、昔から禅の修業のために日本からも何人もの修行僧がここで学んだことがあります。これらの修行僧の何人かが帰国後精力的に布教活動をおこない、朝廷から「国師」号が贈られました。そのため、徑山寺は、日本の仏教、茶、茶道の発祥や発展と非常につながりが緊密な所です。
 例えば、静岡茶の始祖と伝えられている「聖一国師」(しょういちこくし 別名、円爾弁円)が中国の宋から持ち帰った茶の種を蒔き付けたと伝えられ、静岡茶の普及の功労者とされています。
 また、その後径山寺に修行に来た大応国師(だいおうこくし 別名、南浦紹明(なんぽじょうみょう))も宋から帰朝の際、古くから「茶宴」と呼ばれる僧侶の茶道会で使われていた茶の臺子(茶の湯で用いられる棚)などの茶道具一式を持ち帰って、中国茶の礼式を初めて日本に伝え、茶道の原型になったといわれている。
 その後も日本の茶の栽培や茶道の発展に大きく貢献した栄西も、この径山寺に一時期滞在し、径山寺で作られた茶や道具を持ちかえ、広げていったといわれています。栄西はのち、歴史上有名な「喫茶養生記」を著書しました。
 ここまでの説明で径山寺は如何に日本と関係が深いかご理解していただけたと思います。
 そこで径山あたりで作られた径山茶を少し触れておきます。この茶は、非常に深い緑色の細長い茶葉が特徴で、しかも日本の緑茶のような味わいをして、中国緑茶を飲みなれない方にもとっつきやすい、中国緑茶入門茶ともいえるお茶なのです。 中国語の専門用語で表現すれば、「葉は若く外形繊細にして繊毛あり、翠緑色で香り爽やか。茶湯は味まろやかで翠緑色をなし透明。」となります。
 この径山茶は古くから有名で、いまでも浙江省十大名茶と指定されています。生産量が少ないため、貴重品とされています。いままで「心也清茶社」でも入手が困難なため、緑茶の講義に使われませんでした。今回の径山寺の旅で仕入れルートを開拓できましたので今後講義での使用を期待しています。(続き)

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